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Yu Su: I Want an Earth

2023 / Pinchy & Friends
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重層的な音が知らせる、共にあるということ

24 August 2023 | By Haruka Sato

あまりにも個人的な体験だけれど、このEPを聴きながら公園を歩いていたとき、「Pardon」と鳥のさえずりやぱらぱらと降っていた雨の音とがうっすらと合わさって聞こえて、ちょっと感動して、わたしはわたしだけでここにいるわけではないことを思い出した。

『I Want an Earth』は、Yu Suがカリフォルニアにある砂漠の町、オーハイに滞在し自然と共に過ごした経験や、バンクーバーにある自宅での生活のなかで呼び起こされた作品だという。砂漠、渓谷の植物、柑橘類が育つ大地、それらを生み出した洪水や暴風雨から、光の反射、暖炉で燃える薪など周りにあったものもインスピレーションとなり、EPに反映されているのは制作時の彼女の環境だそう。

Yu Suの出身は中国の開封市で、夢中になっていた音楽を続けるために大学進学のタイミングでバンクーバーに引っ越した。それまで3歳から17歳の間はクラシックピアノを習っていたと《Record Culture Magazine》のインタヴューで話している。そんな彼女がつくる楽曲はメロディが主体となっていることが多い。とくに今作は、複数のフレーズが焦点を入れ替えながら、またはひとつのフレーズがディレイで重なることで楽曲が展開していく。そこに、ゆっくりじわりと始まるこの作品に寄り添う風や波、雨のようなノイズ、なにかを丸めたり洗ったり引きずったりするような音、叩きつけるような音、床を擦るような音や金属的な上昇音、潜ったようにくぐもった音など、聴くタイミングや聴く人によってイメージが変わるであろう器楽的ではない多様な音も重なる。

「I Want an Earth」ではアンビエント・ユニット、You’re MeのメンバーでもあるScott Johnson Gaileyがギターを、共作シングルもリリースしているAiden Ayersがベースを追加で録音し、ポコポコとしたニュアンスや情感あるメロディ、動物の鳴き声のようにも聞こえる弦の擦れる音などを加えている。ほかの楽曲にも、散発的な音価の長いシンセの和音や小刻みな単音のフレーズがあることで、音の厚みというよりも重なっていることが強調される。このEPは、さまざまな音と、それによるさまざまなイメージが重なる多層的な作品と言えるだろう。

最後の曲「Pardon」は、ほかの3曲と比べると曲を構成する要素がぐんと少なく、余白の多い楽曲だ。それまでの重層的だった音とイメージが途端に軽くなり、張り詰めていたものが緩む。余白には音の重なりの残響とイメージの重なりの残像が漂う。引っ張っていたものから放されたことで外の様子が入り込み、今度は自分のまわりの環境が作品と重なる。そうやってこの作品と自分のいる場所の音や景色とが重なったことで、わたしはなにかと共にあり、わたしだけでいるわけではないと思い出させられたような気がしている。(佐藤遥)


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Yu Su『Yellow River Blue』
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