Review

Robyn: Honey

2018 / Universal
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エレクトロ・ポップの女王が歌う困難を越えて辿り着いた”ハニー”

21 December 2018 | By Daichi Yamamoto

ケイシー・マスグレイヴスの『Golden Hour』然りアリアナ・グランデの「thank u, next」然り、最近はポジティブな愛の歌に惹かれることが多い。スウェーデン出身、25年近いキャリアを持つロビンの8枚目となるこのアルバムもそうした作品とも並べられる、過去の困難を超えたからこそのスウィートネスを表現したポップ・アルバムだ。

煌びやかなシンセのアルペジオとアップリフティングなビートで幕を開ける冒頭の「Missing U」は、まさにロビンのキャリア後期の代表曲となった「Dancing On My Own」(2010年)に通ずる、「悲しみの中で踊る」爽快なアンセムだ。だがその「悲しみ」はアルバムの中で徐々に形を変えていく。その後に続くのは、音楽を通して誰かと繋がっている感覚(「Because It’s In The Music」)、謝ることや許しを請うことの困難さ(「Baby Forgive Me」)、愛すべき人がいるうちに伝えなくちゃ(「Send to Robin Immediately」)など、人と人の間の繋がりをテーマした曲たち。更にラストの「Ever Again」でジョセフ・マウント(メトロノミー)が弾くカラフルなシンセと共に「私のことを信頼して/二度とあんな風にはならない」という歌が聴こえてくれば、アルバムを聞き始めた時とは異なる景色が見えてくるはずだ(その直前の陽気なハウス曲「Beach2k20」も、彼女の見つけた新たな喜びのようで面白い)。

過去作と比べ、キャッチーなフックを持つ楽曲は大きく減った。多くで語られている通り、長年連れ添ったパートナーとの失恋、デビュー時からの関係のプロデューサー、クリスチャン・フォークとの死別が本作に与えた影響は大きいだろう。だがその分、それらとゆっくり向き合って選び抜かれた言葉は、落ち着きと共に自信も感じさせる。つまり、彼女の歌は悲しみや失敗が彼女に与えた新たな気付きであり、次の機会で同じことを繰り返さないためにそれらは歌われる。困難の先にはより甘い”ハニー”がある。ここにあるのは誰よりも説得力のある上質なポップスだ。(山本大地)

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