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Arima Ederra: An Orange Colored Day

2022 / Arima's Lab
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作り込まれた音に潜む難民の血

18 November 2022 | By Daisuke Emori

アトランタ生まれ、ラスヴェガス育ち、現在はLAを拠点に活動する、オルタナ・ソウル系のシンガー・ソングライター、アリマ・エデラ。甘いエンジェル・ヴォイスの持ち主で、そのどこか幼さを残した声でさえずるように歌われる無垢なメロディが最大の魅力、なのだが、デビュー・アルバムとなるこのアルバムを聴いて驚いたのは、そうした第一印象を良い意味で裏切る周到なプロダクションだった。

先行曲の「Steel Wing」や「Portals」、「Free Again」は、いずれもペラペラなギターやドタバタしたドラムにまず耳がいくような作りの曲で、初めて聴いた際にはデビュー前のスティーヴ・レイシーがiPhoneで録ってサウンドクラウドで上げていた曲群を思い出したりもした。しかし、アリマ・エデラの場合、それはあくまで意図的なチープさだったのだろう。本作では、神秘的なハープの音色に導かれて始まる「Letters From The Imaginary」を筆頭に、ファンキーなパートを設けたメドレー形式の「Drugz/Wooden Wheel」、ジャジー・ソウルなタイトル曲、ピアノ・バラードの「Yellow Cabi」、優雅なストリングスを纏った「Fall For You」など、さまざまなタイプの曲が収められており、それらはアレンジから各楽器の音色に至るまでよく練られている。ピアノと手拍子とベースで聴かせる「Message」も実にシンプルな曲だが、ポリフォニックなコーラス・ワークの織り方はとても巧みで、終盤にはサックスやフルートも交えた気品あるアンサンブルが待っている。

天性のピュアな歌声に親しみやすい意匠を纏わせて、作りこまれた楽曲に人懐こい表情を与えたのは、本作の多くの曲でプロデュースを担うテオ・ハーム(Teo Halm)だろう。ハームといえば、ケヴィン・アブストラクト、ラウリー、ゴールドリンク、ケルシー・ルー、ラヴィン・レネイ、ウミなど、近年のインディ・ラップ~オルタナ・ソウルの新星を多くプロデュースしてきたキーマンだ。インディ・ポップ的な要素をブラック・ミュージックのフォーマットに現代的な感性で取り入れてきた彼の手腕がここでもしっかりと発揮されている。ちなみにエデラにハームを紹介してくれたのはマイケル・ウゾウルだそう。初期のオッド・フューチャー周辺からオルタナティヴなラップ~R&Bの流れに寄与してきたウゾウルが、陰ながら関わっていることも嬉しい。

ちなみにアリマ・エデラの母親はエチオピアからの移民で、父親はスーダン難民キャンプにいたのだという。わかりやすいアフリカ色はないものの、コーラス・ワークの美しさはアフリカ的だし、何よりも「マイ・レフュージー・ブラッド(難民の血)」と凛と繰り返す「Steel Wing」のレゲエ・アレンジでしっかりと主張されている。(江森大亮)

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