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平成リバイバルの最前線:elfactionの魅力を解剖する

20 December 2024 | By Z△IK△

過剰な飾り文字、ガビガビのスクリーンショット、そしてオタク的でありながらクールな楽曲…。

ある日、Spotifyのおすすめに現れた謎のアーティストたち。彼らは「elfaction」と呼ばれ、インターネット上でじわじわと人気を拡大している。


2022年頃からSoundCloudで注目を集め始めた「elfaction」は、一見するとジャンル名やグループ名のように聞こえるが、実はそうではない。

elfactionの人気アーティストの一人であるJunshiは「(elfactionは)一緒に音楽を作る人々のグループのような集団として見られていると思うが、実際は、ビデオゲームやアニメの影響を受けて音楽を作るのが好きな友人のグループだ」と語っている。つまり、elfactionは特定のジャンルや固定メンバーのグループではなく、共通の趣味や美学を持つアーティストたちの集まりであると言える。

elfactionの音楽は一言で「これ」と形容するのが難しい。ゲームやアニメのBGMをサンプリングしており、それにラップを乗せているという点では共通しているが、EDM寄り、アンビエント寄り、交響曲寄りなど、それぞれのアーティスト達はユニークなスタイルを持っている。

アルバムカヴァーには、主に低画質なアニメ/ビジュアルノベルのスクリーンショットが使用されている。潰れそうな文字や荒い画質の二次元キャラクターは、平成初期の低画質が当たり前だった時代を彷彿とさせる。また、特に目を引くのが、タイトルの特徴的な飾り文字だ。一目見ただけでクリックせずにはいられない強烈なインパクトを持つこのデザインは、オンラインのフォント変換サービスを使って作られているそうだ。
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では、elfactionはなぜ人気になったのか。その背景には、ここ数年の平成リバイバルブームが関係していると思う。

たとえば、リトアニア出身のYabujinが2020年に発表した「302? ionwan2go」は、ビジュアルノベルゲーム『ラブひなアドバンス』(2001年)のBGMをサンプリングした楽曲で、TikTokで大流行した。また、Frutiger Aeroブームで一躍人気になった阿保剛の「LEASE」(2002年)は、世界中のアーティストによって多数のリミックスが作成された。

こうした楽曲が若者のノスタルジーに訴えかけ、SNSやストリーミング・サービスを通じて爆発的に拡散されたことが、elfaction人気の一因だろう。


最後に、elfactionの個性的なアーティスト達を紹介する。

・Junshi

レトロ感がありつつも新しさを感じる音作りが魅力のアーティスト。2015年から音楽活動を開始し、最初は普通のラップミュージックを作っていたが、2022年にSayako(後述)に出会い、現在のスタイルを確立した。

「ᎧᏁֆᏋᏁ ֆᏂᎥᏋᏝᎴ ᎴᏒᏋᏗᎷᎥᏁᎶ」は、Frutiger Aero好きに刺さるかも。

・Sayako

現在17歳という若さながら、これまでに約100曲を発表している。6作目となる「ĀᏕᏬᏋᏁᏠᏋᏒᏬ ᏰᎧᏬᏁᎴᏗᏒᎩ ᏗᎥᏠō 2002」(2022年)は、Spotifyで50万回以上の再生を記録した。

・7Nightz

elfactionの中心人物の一人。特徴的な飾り文字は彼が最初に使用したものらしい。現在はクラシック的な要素とラップを融合した独特のスタイルの作品を発表している。

・Gomi

かつてニコニコ動画で一世を風靡したアダルトゲーム/アニメ『School Days』(2005年)のスクリーンショットや、奇妙な日本語のタイトルを使用し、どこか懐かしい「Old Internet」感を漂わせている。途中でテンポが変わる曲が多く、聴き手を飽きさせない。おすすめはボサノヴァ風の「Candyland彼女はキャンディランドを訪問したいです」。


あなたのSpotifyやSoundCloudでも、「elfaction」というキーワードを検索してみてほしい。その先には、あなたを平成の記憶と新しい音楽体験へと誘う世界が広がっているはずだ。

この記事を書くにあたり、elfactionの人気アーティスト=Junshiにご協力頂きました。ここに感謝の意を表します。


(Z△IK△)

Text By Z△IK△

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