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「ほどよく上品に音にまとめたくなかった」
ソロ・プロジェクトとなったKIRINJI 堀込高樹の身体性と野趣

24 December 2021 | By Shino Okamura

そして一人が残った。などというドラマティックな表現に流されない、実にクールでラディカルなポップ・フォーミュラー・アルバムだ。KIRINJIの新作『crepuscular』。固定メンバーによるバンド形態から堀込高樹のソロ・プロジェクトとなって最初のアルバムであるという事実がもたらす覚悟のような空気は確かに無視できない。だが、ここにはそうした周囲の変化を自らの糧としていく堀込高樹というコンポーザーの強かな熟成が見事に投影されている。そして、その熟成とは、無論、現代の空気に乗っかっていくことを楽しめる柔軟性や好奇心に背中を押されたものであり、軽やかな身体性によるものだ。あるいは、「ポップスは徒花である」という真理を自覚した上でその先端性を探るモダニストたる自覚が加速させたものではないか、とも思える。歴史と記憶の中に蓄積されたアーカイヴを引き出し、それを自然と今の空気の中でキャッチ&トスができるポップ・コンポーザー。そんな傑出した才能の持ち主であることに、今作を聴いて異論を唱える人など一人もいないだろう。だが、今の堀込にはそんな自分を、一聴するとストイックな作風の中でふんだんに暴れさせようとする野性味もある。言ってしまえば、計算に全てを委ねない、勢い仕上げてしまうような偶発性……いや、「ノリ」が新生KIRINJIの肝になっているとも言える。

新作の参加メンバーは、千ヶ崎学、宮川純、伊吹文裕、橋本現輝、石若駿、角銅真実、川口義之。そして、「薄明」でデュエットしたマイカ・ルブテ、「爆ぜる心臓」にフィーチュアされたAwich。そうした強者たちも偶発性に引き込み、自分自身をもコントロール不能世界へと解き放つ堀込高樹に話を訊いた。
(インタビュー・文/岡村詩野 撮影/川島悠輝)

Interview with Takaki Horigome

──最近は「摂取しよう」という意識でリスニングしなくなったそうですね。

堀込高樹(以下、H):そうなんですよ。『愛をあるだけ、すべて』(2018年)の頃は、何か新しいものを頑張って聴こうみたいな気持ちでやったのですが、割とそれが習慣化してきて当たり前のような感じになっていて。だから、たくさん聴いてはいるんだけど、アーティストの名前とか曲の名前とか全然覚えられない(笑)。サブスクリプション・サービスの特性かもしれないけど、何聴いているの?って訊かれても、パッと思い浮かばないんです。「えーっと、えーっと……」って感じ。一応、Spotify独自のプレイリストもチェックはしています。

ただ、映画(『鳩の撃退法』)とドラマ(『共演NG』)の劇伴音楽を担当したのですが、制作期間が去年(2020年)の3月頃から秋ぐらいまで続いて。劇伴の仕事って、シーンに合わせた音楽……例えば監督から「タンゴっぽい曲が欲しいんだけど」と依頼されたりもするので、そのリクエストに応えるために色々聴くようなスタイルになる。オーダーのために音楽を聴くわけです。それは、普通に新しい音楽をチェックする感覚とは違うんですよね。だから、今回のアルバム制作は、劇伴の仕事が立て続けにあったその流れで始まったから、あまりいろいろ聴く時間がありませんでした。春からシングルもどんどん作っていたので、気持ち的に立て続け感がずっとあって。実際、「再会」を4月に出したので1月~2月はその作業に集中していたわけです。その後にカップリングの「恋の気配」(2021年ヴァージョン)を作り直したりとかしていると、5月になってしまった……すぐひと月使っちゃうんです。そういう時に急に刺激的な曲を聴いたりすると乱れるので、自分の作業に集中したいときはなるべく聴かないようにしています。

──制作に入ると他の音楽をシャットアウトする。そういうミュージシャンは確かに多くいます。

H:僕も、『cherish』(2019年)や『愛をあるだけ、すべて』の時は聴いていました。このぐらい低域出てるのかとか、このぐらい音数少ないんだとか、そういうことを確認するために、リファレンスとしていろいろ聴いたっていう感じ。ミックス段階でもそうだし、アレンジしてる段階からもそうだった。でもそれは刺激を得ようとか、インスピレーションをもらおうとかっていうのとはちょっと違う聴き方。技術的に参考にしようっていう感じの聴き方ですね。でも、今回はそういうわけであまり聴かなかったんですよ。

──高樹さん1人のソロ・プロジェクトになったということとの関係は?

H:いや、そこはあんまり関係ないと思います。バンドはプレイヤーの個性が、どうしても反映されて、思いがけない展開になったりもする。それは、カラーでもあります。今回も基本は同じで、こうしたいんだけど……という僕の考えがまずあって、それをサポート・メンバーが演奏してくれる、という。ただ、これは音楽をリスナーとして聴く/聴かないとは関係がないけど、僕が頭の中で考えている音を演奏してくれるサポート・メンバーに伝えるにあたっては、やっぱり今回はこれまでとは少し違ったのかもしれません。僕自身が一緒にやったことのないミュージシャンとやるわけだから、どうしたらいいか、どうやったらあんな風になるのかなとか、どうしたら自分が欲しい感じになるのかなってことを自分の中で試行錯誤しながらやりました。今回は経験も積んだからっていうのもあったからか、割と具体的に浮かぶヴィジョンをプレイヤーに伝えることができたと思います。バンドでやっていたときとあんまり変わらないって言ってしまうと語弊がありますが、結局ミュージシャンとのコミュニケーションの仕方って、バンド・メンバーであろうがなかろうが、そこは一緒なんですよね。僕が全部1から10まで言うわけじゃなくて、僕が出したアイディアに対してミュージシャンが、こういうのもあるよ、という感じで、いやそうじゃないんだけどな。ということもあれば、それそれ!ってこともあるし。でも、そういう過程で他の音楽を参照することは今回はあまりなかったですね。

──それを言えば、そもそも兄弟時代の作品も同じということになりますよね。当時もスタジオ・ミュージシャンの方が演奏を受け持ったわけですし。

H:そうです。基本的に一緒ですし、バンド時代も結局は一緒でした。ただ、ミュージシャンが違うので、例えばエイトビートを叩いてもらっても、なんかヒップホップを通過した人のエイトビートって新しい何かがある。

──それによって参考にする音楽も変わったりしますか? 例えば、今回は石若駿さんをはじめとしてジャズ~フュージョン系のドラマーが揃っています。

H:そうなっちゃいましたね。

──「なっちゃいました」って(笑)。

H:友達の友達は……みたいな感じでいろいろと探していたらそうなっちゃったみたいな感じです(笑)。橋本(現輝)くんはテレビ収録の際、石若くんがやったプレイを当て振りしてもらったのですが、それが完璧にできていて、うわー上手いなと思って。そもそもロック~ポップス系の人ってそんなに知らなくて、方向的にもあまり求めてこなかったから自然とこうなっちゃうんです。でも、だからってモロにジャズ~フュージョンをキーワードにするのではなくて、16ビートの割とオーセンティックなパターンでも何か今っぽい感じが欲しいなとか、そういう感じ。それを欲しいと思うとやっぱりジャズ系の人ってなってくるんですよね。

──「今っぽい」、ですか(笑)。

H:あまりフォーカスすると寄せていっちゃうから良くないと思って。ただ、ドラムのパターンだけではなく全体の話になりますが、「ただの風邪」の頭の方は、「サンダーキャットっぽいですよね」ってキーボードの宮川(純)くんに言われました。自分はそういうつもりはなかったんです。なんかベニー・シングスみたいで、キャッチーでいいなぐらいでその程度の認識でした。でも、その後も何人かが何かサンダーキャットっぽいですよねって。フォーカスを絞り込まなかったからこそ、自分の思ってもいなかったものが滲み出たのかなと思います。

──その「今っぽさ」っていうのはどういうところに表出するものだと思っているのでしょうか。

H:なんですかね……よくわからないんですよね。ノリとしか言いようがないんですけど。

──いや、絶対わかってますよね。

H:いやいや(笑)。

──わかっててはぐらかしてません?

H:(笑)もちろんちょっとズラしたりとかね。何か溜めたりとか、ハットはちょっとなんか何拍目だけこうなってみたいなことをいろいろ解析すれば色々説明できるのでしょうけど、実はそういうのは本当にあんまりやらないんですよね。例えば、聞くところによると、ディアンジェロとかも意外とノリだけでやってみたところあるらしいんですよ。ジャズ系の人とかって何拍目はこうなって、何拍目はこうなってとかを解析する人もいるけど、 クエストラブとディアンジェロがセッションをしてる時って、ズラしてやってるとなんか自然にいつの間にかいい感じのズレになって、「最終的にこのズレがいいね」っていう時のおさまる感じが見つかるらしい。そういうことを何か直感的にわかってる世代っていうのがやはりあるような気がして。そういうことを直感で無意識のうちにやれてしまう人と、プレイヤーとしてのセンスを時間をかけて磨いた人だと、なんかやっぱり上がってくるものが違うんだと思います。

──そういう「直感で無意識のうちにズレを出してしまう」感覚が今の若い世代のリズム感にはある、と。

H:そう。ただ、このアルバムでそこまで何か明確にズレとかはやっていません。だから、そういう感覚を持ってる人がやったということです。今っぽいビートが満載なんだろうと思って聴くと拍子抜けすると思います。本当に、結果そうなったっていう感じです。一応狙っては書き始めるのですが、曲が出来上がってみるまではわからないんですよね。

──「出来上がり」というのは、どの段階を指しているのですか?

H:スタッフに聴かせるデモテープの段階です。作り始めてからそこにたどり着くまではわからないんですよ、いろいろ紆余曲折しながら作るので。例えば、さっき話した「ただの風邪」は、確かに僕としてはベニー・シングスをイメージしながら作り始めたわけですが、でもそれは音像をイメージして作ったわけで、加えて、サビでスパンって世界が変わる感じが欲しいなと思って。さらに間奏でもうワンクッション、美味しいところがくると聴き飽きないだろうなとか色々考えながら。

──聴き飽きないって(笑)。高樹さんの曲は飽きるどころか、聴くたびに異なる発見がありますよ。

H:ありがとうございます。やはり、聴き飽きないようにってことは考えないと。だってずっと自分で作っていると飽きますからね。作ってるうちに飽きちゃったら、聴く人はもっと早く飽きちゃうだろうなって。


──高樹さんが近年作る曲は、割と淡々としたフレーズやリフが繰り返されたり、大きな展開を持たないうちに聴き手を一つのグルーヴに巻き込んでいくような作風が多いと思います。前はもっとあっち行ったりこっち行ったり……といったイビツさがありましたが、今は動きの少ないリフから大きなグルーヴに巻き込んでいくソング・フォーミュラーが定着している印象があります。

H:そうですね。やはりリズムを意識しながら書くことが増えたかもしれません。そうすると反復の心地良さがあるから、リズムが反復されてメロディもそれに伴って反復されるとより相乗効果があると思います。もちろん、メロディの綺麗な曲があったらメロディを聴きますよね。

──歌メロから書くことはあまりなくなっている?

H:だいたいのテンポと、パターンを組んで、それを鳴らしながらメロディを作ります。昔はメロディから作っていました。そうすると、テンポを倍にしてバラードにしてみたり、アップテンポにしてみたり、8のものを16にしてみたり、すごく迷うんですよね。Aメロは16ビートですごく気持ち良くできた、でもサビのメロディが何か8分っぽいノリだなとかって、そういう部分ですごく悩んだり。でも、今はそういう回り道することはなくなりましたね。ちょっと前だったら、例えば8小節ヴァースがあって、サビが何小節とかって割と割り切れる形で考えたけど、今回は何かはみ出しているんです。詞を先で作るとやはり尺が曖昧っていうか渋みが入ってきたりとか。構成も繰り返しじゃなかったり、どこか余ったりとか。そういうのがなくなりましたよね。

──ある種の規則性みたいなものに乗っかってグルーヴを創出する感じですね。「It’s a Fine Day」を思わせる4曲目「薄明」なんかは……。

H:「It’s a Fine Day」?

──ご存知ないですか?

H:誰の曲です?

──ジェーン(&バートン)です。83年の曲です。今ちょっと聴いてみます?

H:(聴きながら)これか! これ知ってる! 似てる!(笑)

──(笑)

H:やばいじゃないですか(笑)。でも、今の今まで誰にも言われなかったです。

──これはマイカ・ルブテさんとの共作(作詞)ですが、こういう規則性ある曲に対して、歌詞はどのように作ったのですか?

H:まず初めに、自分が歌ってるサビまでの歌詞を作って曲として完成させたあとにマイカさんに渡しました。「こことここを歌詞書いてください」ってお願いして、内容を受けた感じの歌詞にしてもらいました。

──これ、重要な曲ですよね。アルバムのタイトルと意味は同じだし。ラッパーをフィーチュアしたわけではない、割と結構正攻法にデュエットした曲です。

H:そうですね。ヴォーカリストをゲストに呼んだのは初めてかな。マイカさんは、ラジオでかかっていて、英語と日本語のどちらもいけるってことを話されていて。ちょうどその頃、この曲を書きつつあったので、じゃあ、お願いしてみようかなって。

──それに対して、ギターは高樹さん一人でほぼまかなっている。作品の中におけるパートの比率が少し変化してきています。

H:自分で弾けるので、他にギターの方を呼ぼうってなかなかならないんですよ……って、本当にただそれだけです。でも、自分はギターの練習をそんなにしない(笑)。本当はした方がいいんです。ギターを日頃からちゃんと練習しておけば、レコーディングがもっと早く終わる。なんだかんだで丸1日掛かっちゃいますから。今回、ギター・ソロはほとんどギルドというメーカーの古い箱モノを使いました。普通だったらレスポールや335で弾くのですが、それだと普通すぎるなと思って。なんかいい音すぎるっていうか。真面目すぎるというか。だから、普通はあんまり使わないフルアコの古い音色を使っています。ちょっとモコっとしてる感じ。

──いい音すぎない方を求めたわけですか。それはなぜなんですか?

H:上手な感じを出しちゃうのがイヤで。ソロってやっぱり上手いだろうってアピールするためのものじゃないですか、どうしても。でも、僕はそのフレーズ、メロディを聴かせたいだけなんです。例えばGONTITIは、ビブラートをかけないし、ただ音符を丁寧に置いいくっていうスタイルですよね。ああいうようなことをギター・ソロでやったという感じです。例えば今回「気化猫」にギター・ソロが入っていますが、あれもいわゆるよく使われてる335とかレスポールで弾くとヘンに上手く聞こえちゃうんですよ。だから、なるべくギルドでいこうと。「first call」のソロも全部ギルド……フルアコです。しかもピックアップも、なんかちょっと古い。ジャズっぽいんだとジャズほど甘くないっていう感じかな。まあ、弾きまくるタイプのギター・ソロではないギター・ソロがやりたかったってことですね。

──一つ一つのパーツ/パートごとに組み立てていくやり方だとただでさえ時間もかかりますしね。

H:そうなんです。デモテープを作りながら、これは打ち込みの方がいいなとか。打ち込みがいいと思ったけど、やっぱり生の方がいいなってこともあるし。しかも、実はベースも、千ヶ崎(学)くんにフレーズを決めて渡すんですよ。打ち込みでベースっぽく作ることもできますが、やっぱりベーシストの手が入ると違ってくる。仮にそのおたまじゃくしはこっちが指定したものであっても絶対に違ってくる。そこが一番重要です。

──今、高樹さんが求める「今っぽい」ベースというのはどういう感覚でしょう?

H:やはりレンジが低いっていうことですね。あとは、割と音数が少ないもの。R&Bとかヒップホップの音作りが参考になると思うのですが、だからってあまり意識的に聴いてるわけではありません。ただ、ベース・プレイヤーの方がそういうことには常に気を配っているので、お願いしたいわけです。ここはもうちょっと短くした方がいいとか長くした方がいいっていうことだったり、ノリに関することは千ヶ崎くんに相談しています。昔は手数の多いベースが大好きでしたが、今は必要最低限でいい、という感覚に変わりました。

──つまり、楽曲全体を包括して捉える耳に変化してきた。そこを一つのキーワードにするなら、どういう表現になりますか?

H:空間的なリバーブ感かな。ヴォーカル処理もちょっと歪んでるというかサーチュレーションがかかっていたりとか。どうしてもほどよく上品に音にまとめたくなってしまいがちだけど、そこからいかに離れるか、というのが大事でした。ヴォーカルは特に自分で歌ったから録り音とかわかってるじゃないですか。そうすると元々を大事にしたい気持ちが働くんですよね。で、それを貫いちゃうと作品として出来上がってくると、「なんか普通だね」とか「何か地味だね」ってことになってしまう。だから、そういうのも思い切ったことがしたいなと思って。あと、音数を減らすとそういう残響音がはっきり聞こえるんですね。だから、残響がある/ないの差をつける。「ただの風邪」が顕著で、音数を減らして始めて、サビで残響音をつけるとバーンと変化する。「気化猫」も元々スライみたいなイメージで始めて……まあ、全然スライじゃないですけど(笑)、ファットなベースがあって、ボトムはタイトで……だけど上の方はふわふわしてる感じっていうのを最終的に目指しました……って、なんか言っていることが漠然としてますよね。「ボトムはファットだけど、上はふわふわしてる」とか(笑)。

──(笑)その「下はファットで上はふわふわしている感じ」というのは、ともすればすごく曖昧な音作りに着地してしまうリスクもあったと思うんです。あるいは地味な音作りとか。

H:そうですね。実際、作り始める前は、明るくて華やかな作品にした方がいいのかなとは思っていました。世相がなんとなくどよんとしてるから。と思ったけど、でも、そういう中で生きているから、あんまり明るい曲ができないわけです。それは仕方ないかなと思って。今の世の中のあり方みたいなものが反映された曲を作ると、どうしてもこうなっちゃう。そういう気分が音の「ふわふわ」みたいな感じに反映されてるんじゃないかなと思います。自然と出ちゃったというか。

──でも、割と短い曲が多いから、その「ふわふわ」とした曖昧さが冗長じゃない。トロピカリズモ時代のカエターノ・ヴェローゾのような「曖昧me」は4分超えてますけど、曲調のテーマが明確だから作品全体のオブスキュアな感じの中でいいアクセントになっていますよね。「爆ぜる心臓」はもちろんですが。

H:一曲4分台にすればもっと長くなりましたが、4分台の曲って今の世の中にあんまりないですよね。そういうものに聴き慣れた人が4分の曲聴くと、「まだやってんのか」ってなっちゃうかもしれない(笑)。「薄明」は4分半くらいあるのですが、実は迷ったんですね。後半の切れ目で終わらせて、3分50何秒台にしようとも思ったんです。でもあの最後のリフレインが美味しいし、これももう1個のサビって感じだから、これを切ってしまったらもったいないなと。それで、ちょっと長いけど4分30秒で仕上げました。そもそも、昔は5分を超える曲ばっかりだったわけで、そういうのはあまり考えていなかったのですが、今はそういうところをすごく考えますね。それに、昔って、Aメロ、Bメロ、Cメロがあって、それ2回繰り返して、間奏があってさらにメロディがあって……という感じの、そのフォーマットが大半だったじゃないですか、自分たちの作る曲も。それが昨今、重いなというか、かったるいなこの曲聴くのっていう風に自分でもなっちゃう(笑)。そういう意識の変化が音作りにも曲の長さにも現れているのかもしれません。

<了>


Text By Shino Okamura

Photo By Yuki Kawashima


KIRINJI

crepuscular

LABEL : Universal Music
RELEASE DATE : 2021.12.08


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