Review

Sunflower Bean: Twentytwo in Blue

2018 / Mom + Pop Records / Hostess
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「青き22歳」。「憂鬱」と「希望」のロック・ミュージック

19 April 2018 | By Yasuyuki Ono

ドリーミー、サイケ色が強かったファースト・アルバム、『ヒューマン・セレモニー』(2016年)から大きな変化が、このブルックリン発のバンドに訪れたようだ。2年の時を経て届けられた本作では、ザ・バーズのようなジャングリー・ギター、T・レックスのようなパワフルなリフ、ヴェルヴェッツのような混沌としたポップネスが展開される。アンノウン・モータル・オーケストラのジェイコブ・ポートレイトを制作陣へ迎え、より自身のルーツ色を強めた本作は、全体としてフリートウッド・マック『噂』(1977年)も引き合いに出されるような、愁いとかすかな煌きを帯びたポップ・ロック・アルバムとして仕上がっている。

アルバム・タイトル『青き22歳』には、メンバー全員が22歳を迎えた今を表現するにふさわしい色が「青」だという意味が込められている。その「青」は多義的であり、「憂鬱」と「希望」という反転する感情を指し示した色として本作を彩っている。
彼らは、2016年末のアメリカ大統領選挙期間中に行われたツアーにて、アメリカ各地の現状を見聞きした。その経験を経て、彼らが本作にて示す「憂鬱」は、高騰する国の教育費や教育ローン問題といった、彼らと同世代の若者たちをめぐる問題(「クライシス・フェスト」)であり、フェイク・ニュース、ポピュリズムという社会趨勢(「シンキング・サンズ」)でもある。

ただし、彼らは単純に何かと「闘おう」とは言わない。「2018年にロック・ミュージックを作るには、(逆境の中でもへこたれない)レジリエンスが必要なんです」とジュリアは語る。「たとえ私がひとりぼっちだったとしても、私を呼びつける闇夜の中に静かに入っていったりはしない」(「トゥエンティー・トゥー」)と、一人でも粘り強く生きていく様を、自らの年齢が記された曲でジュリアは歌う。皆が今を逞しく生きるための「希望」の音楽を、サンフラワー・ビーンは本作で鳴らしているのだ。はっきりとした現状の「憂鬱」と将来への「希望」を抱える22歳の若者たちが鳴らす、アメリカ(の同世代)へ捧げたロック・アルバム。それが、『トゥエンティー・イン・ブルー』なのだ。(尾野泰幸)

◾️Hostess Entertainment HP内アーティスト情報
http://hostess.co.jp/artists/sunflowerbean/

◾️Sunflower Bean OFFICIAL SITE
https://www.sunflowerbeanband.com/

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