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島根のネット・レーベル《Local Visions》を代表するアーティスト=SNJO ロング・インタビュー
今までの活動とこれからを繋げるような…『Diamond』がそういうアルバムになればいいな

12 November 2019 | By Ryutaro Amano

急成長を遂げている島根・出雲のレーベル――「ネット・レーベル」という狭い枠組みには、もう収まりきっていないだろう――、《Local Visions》(https://local-visions.bandcamp.com/)。「ヴェイパーウェイヴ以降」をキーワードに、あくまでも「ポップ・ミュージック」にこだわったリリースを続けている。

SNJO(シンジョー)の音楽を初めて聞いたのは、《Local Visions》のリリース第10弾として2018年10月に発表された『未開の惑星』(https://local-visions.bandcamp.com/album/–5)だった。フューチャー・ベース、シンセウェイヴ、フレンチ・エレクトロ、ディスコ、アシッド・ハウス、(ダンス・ミュージックとしての)トラップ……様々なエレクトロニック・ミュージックの要素が現れては消えていく。めくるめくダンス・アルバムであり、その構成力の高さにただならぬものを感じた。それと同時に、スタイルを決めない音楽家なのだな、とも思った。ヴォーカル曲が半数を占める『未開の惑星』は、エクレクティックだからこそポップである。

『未開の惑星』から約1年。SNJOがセカンド・アルバム『Diamond』を《Local Visions》からリリースする。彼自身のルーツへの回帰を図ったとSNJOは語るが、それ以上に感じられるのは洗練と挑戦だ。その証拠に、ビートはより豊かになり、韓国出身のラッパーであるSola The Luvaとの「Time」や、宅録作家mukuchiとの「Cyber Attack」など、SNJOの音楽地図の広さを印象づける曲も多い。

2019年10月5日に東京・上野水上音楽堂で開催された《tiny pop fes》の後、「《Local Visions》の若頭」との異名を持つ(?)SNJOへのロング・インタビューを行った。(取材・文/天野龍太郎)

Interview with SNJO

――SNJOくんが子どもの頃にどんな音楽を聴いて育ったのかとか、そういうオーソドックスな話題から始めましょうか。

SNJO(以下、S):音楽を聴き始めたのは完璧に親からの影響ですね。車で出かける時は毎回、カーステで音楽をかける家族だったんです。父親はちょっと斜に構えたリスナーで、シャカタクとか、インストものをよく聞いてました。母親は関ジャニ(∞)とかのジャニーズや東京事変が好きで。近所のTSUTAYAはCD 5枚1000円で1週間レンタルできたので、毎週のように家族で行っていたんです。両親は2枚ずつ選ぶんですけど、僕には1枚だけ選ぶ権限があって。

――出身地は?

S:広島です。地元は、気候とかは好きやけど、文化からはかけ離れた土地なんですよ。中学の時に買ってもらった4GBのウォークマンに録音機能があったんです。あんな機能がついていて大丈夫なのかなって思うんですけど、イヤホンジャックから音源を吸い取る形式で、YouTubeとかからぶっこ抜いた曲をよく聴いていました。その頃は東京事変とかELLEGARDENとかを聴いていて、家ではヤマタツ(山下達郎)がずっとかかっていました。あと、スターダストレビューも。

――SNJOくんの音楽はエレクトロニック・ミュージックだけど、その頃聴いていた音楽はポップスやロックなんですね。

S:でも今思えば、裏(拍)でハイハットが入っている曲が好きだったんです。そこから自分がどんな音楽を好きなのかを考え始めて、どうやら僕はディスコっていうものがめちゃくちゃ好きなんやってわかって。それでTuxedoとか、ブレイクボットとか、エド・バンガー・レコーズ周りのジャスティスとかを聴くようになりました。

――それはいつ頃?

S:中3とか高1とか。楽器はできなかったから、興味はあったけど、DTMもできないだろうって思ってたんです。

――DTMを始めたのは?

S:高校に入って進研ゼミを始めたら、iPod touchがもらえたんです。その中にGarageBandが入っていて、それでトラックを作り始めました。通学時間が1日3時間もあったから、その時間を使って。その時につくっていたものは、ディスコともハウスとも言えないものでしたね。当時のGarageBandって、8トラックしか使えなくて嫌やったんです。でも、音と音との関係性を考えるようになったので、逆にそれがすごく活きています。コードのことも全然わからなかったんですけど、今思えばそんなに関係ないなって。結局、好きな方に寄っちゃうから。

――じゃあ、今も感覚は同じ?

S:同じですね。今回のアルバムは、自分の好きなものに一回ちゃんと立ち返ろうって思ったところもあります。前作の『未開の惑星』は「Maltine(Records)以降」とか、フューチャー・ベースとか、ジャンルにこだわりすぎたところもあって。自分の中で腑に落ちる理由づけをあんまりしないまま制作をしたのが反省点で。だから、「今つくるべき音楽」みたいなことはちょっと置いといて、ちゃんと自分が好きなものを書けるようになりたかったんです。制作中は、「自分が好きだった音楽からは程遠いな、及びはしないんだな」って思っていたんですけど。あとは、アルバムを一気聴きできるようにって考えています。

――in the blue shirtのイベント/ワークショップ《POTLUCK Lab. vol.1》でも、アルバムで聴いてほしいって言っていましたね。取材前に送ってくれたアルバムのデータが、一本のwavで驚きました。でも、それで聴くとDJミックスのような感覚で聴けるし、曲間や繋がりを大事にしているのが感じられて、すごく良かった。

S:「一本wav」は、よくびっくりされます。表面的な言葉や字面もこだわっていますし。HaywyreってMonstercatとかから作品を出してるglitch hop系のトラックメイカーがいるんですけど、その人のアルバムがまさにそういう感じ。流れを外さずに繋がっていて、一回アガったと思ったら、沈んで、みたいな。

――ストーリー性や起承転結がある。

S:そういう仕掛けがあると、アルバムを聞く動機になるって思います。脚本を書いて、それに合わせて曲を作るっていうことが、やりたいことに近いんですよね。

――ビートやトラックを作るにあたって影響を受けているのは?

S:誰ってはっきりと言うのは難しいんですけど、アンサンブル自体はバンドなんです――ドラムがあって、ベースがあって、シンセがあって、歌があるっていう。それを壊したり、増やしたり、みたいな足し算と引き算で考えています。バンドって、音域のすみ分けがかなり理に適っていると思うんです。
……誰から影響を受けているのかって考えれば考える程、ポップな人ばかりが出てきますね。tofubeats、中田ヤスタカ、フォスター・ザ・ピープル……。

――SNJOくんは、そういうどポップな音楽を好きなところが面白いと思うんです。フォスター・ザ・ピープルが好きっていうのもユニーク。

S:新作の「Alive」は、フォスター・ザ・ピープルのマーク・フォスターになりたいって思って書いています。フォスター・ザ・ピープルって僕の中では完璧で、突き詰めるとあれになると思うんですよね。電子音と生音、男女性、アイドルと非アイドル、表方と裏方とか……全部の真ん中があそこにある感じ。曲づくりの面では、フォスター・ザ・ピープルはでかいですね。

――SNJOくんの口から出てくるミュージシャンやバンドの名前は、SNJOくんの音楽と表面的に似ているとは思えないものも多いので面白いですね。

S:クラブで鳴るように、ダンス・ミュージックに落とし込みまくっているからでしょうね。僕は変なポジションやから、イベントでもどうやったら自分が一番浮くかって考えています。クラッシャーになりたいなって。そのせいで毎回、緊張して泣きそうになるんやけど。

――話を戻すと、高1の時にGarageBandでつくり始めた曲はディスコともハウスとも言えないものだったと。ということは、やっぱり4つ打ちの曲?

S:4つ打ちで、裏にハイハットが入っている曲をいっぱいつくっていました。その頃は、普段聴いているものに近づけていく習作っていう意識があって。打ち込みの技術がレベルアップしていくことがおもしろくて、計算ドリルを解く、みたいな感じでしたね。それを3年くらいやっていて、その後、美大に入るために1年間予備校に通ったんです。そこでは技術的にダメなことをしていないかとか、あら探しのように昼から夜まで絵を描いていました。そしたら、自分が好きだったような絵が描けなくなっちゃって……。受験対策の描き方が正解だと教え込まれると、入試に通るような絵は描けるようになるんです。でも、落書きをしていても予備校の先生の言葉がよぎるようになっちゃって。これ、終わったな、描けないなって。

――フラッシュバックしてしまう?

S:うん。音楽にもそういうことが起きるんじゃないかって怖くなっちゃったんです。だから、計算ドリルのように制作するのをはやめようと思って……まだ抜けきっていないんですけど。でも、早いとこ見切りをつけて、好きなものを作れるようになって良かったと思っています。

――ソロになる前は、ヴォーカリストのKanacoさんとTOXXIESというエレクトロ系のユニットをやっていましたよね。ずっと一人で音楽をつくっていたSNJOくんが、自分の音楽を初めて他人に聞かせるようになったのがTOXXIES?

S:そうですね。ユニットは2016年から2018年まで2年間やっていました。当時は自分のことを思って曲を書くのがこっ恥ずかしくって、裏方として音楽をやりかったんです。自分宛じゃない曲、自分じゃ絶対歌わないものを頑張って想像してつくれるようになったのは、面白かったですね。自信もなかったし、ライブのステージにもヴォーカルの子がいたから立てたっていうのが大きくて。
でも、だんだん「これは人のために書いた曲だし、まあいいか」みたいな気持ちになっちゃって……1年くらいで曲を書けなくなっちゃったんです。ひとのための曲をつくりたくて始めたんやけど、「もうひとのためにつくりたくない」って思っちゃって。ただ、ライブはかなり良いものが決まっていて、そのプレッシャーもやばかったんです。
もう無理だなって思っていた時に出したのが、ラフスケッチみたいなものを集めた《Ano(t)racks》からのEP(『SF』、2017年)でした。一人でやるのも案外面白いかもって思い始めた頃、EPを出した翌週くらいに(《Local Visions》の主宰者の)捨てアカさんと出会うんです。

――対面で会ったんですか?

S:そうです。捨てアカさんはパソコン音楽クラブが(京都)メトロでやった《(聲音博覧會)SOUND EXPO》(2017年12月9日)ってイベントに来ていて、僕はその日は会えなかったんですけど、次の日にseaketaくん*が誘ってくれて、3人で会おうってなったので、京都のMeditationsやJET SETに一緒に遊びに行きました。その時、捨てアカさんは「コンピを作るんです、レーベルも始めます」って言っていて……まさか自分が出すことになるなんて思っていませんでしたけど。
*京都のプロデューサー/トラックメイカー。最新作は《CHINABOT》から発表した『Gion ぎおん』。

――《Local Visions》の初のリリースとなったコンピレーション・アルバム『Megadrive』(https://local-visions.bandcamp.com/album/megadrive)が出たのが2018年3月。その前に、そういう接触があったんですね。

S:その頃はTwitterでフォローしたばっかで、面白コンテンツの人やと思っていました(笑)。当時はユニットをやめることになって、完全に一人になった時で、気持ちが落ち込んでいたんです。それで、seaketaくんが慰めてくれていたというか、励ましてくれていたというか。その後、FORUM KYOTOでseaketaくんと企画をやることになったんです(「UPSHFT」、2018年6月3日*)。それで、ゆnovationとÆgillくんを呼んで、Tenma Tenma(以下テンマ)さんも誘ったんですけど、ライブしたことないからって断られちゃって。
*2019年11月9日、京都駅ビル7階広場で《UPSHIFT Vol. 2》が開催され、SNJOとseaketaの他、ゆnovationとwai wai music resortが出演した。

――確か、Tenma Tenmaさんは「Yu-Koh 体験版*」が初ライブだったんですよね。
*Local Visionsとlightmellowbuの初共同企画。2018年12月9日、兵庫・神戸のOtohatobaで開催され、SNJOの他、Tsudio Studio、Tenma Tenma、pool$ide、lightmellowbuのINDMSK、thaithefishが出演した。

S:そうそう。その時、たまたまTsudio Studio(以下ツジオ)さんを知って、「この人だ!」って思って誘ったんです。で、何も示し合わせていないのに、捨てアカさんは既にツジオさんやテンマさんとも繋がっていて。企画の1か月くらい前に僕のリリースも決まっていたから、すごいですよね。その頃からツジオさんやテンマさん、pool$ideくんとか、トラックメイカーの知り合いができるようになりました。

――ここ1、2年で関西のミュージシャンやディガーたちが一気に繋がったんですね。それが今年4月に京都メトロで開かれた「Yu-Koh α版*」に結実した、という。
*2019年4月21日に開催。Tsudio Studio、Tenma Tenma、SNJO、pool$ide、feather shuttles forever、wai wai music resort、lightmellowbuのハタ、INDGMSK、thaithefishが出演した。

S:ぶわーって急に繋がりましたね。

――新作『Diamond』は「逃避行」がテーマということですが、これは?

S:『未開の惑星』の裏テーマは「冒険」やったんですけど、今年は「逃避行したいな」って思うことが増えたんですよね。アルバムの流れとしては、最初の方は街のことを書いていて、最後は「国外脱出するしかない」ってなるんです。マリさん(mukuchi)に詞を頼んだ「Cyber Attack」に「わたしたちこの街にはいられない」っていうフレーズがあるんですけど、 そう言って国の外に出るのであれば、めちゃくちゃいいシナリオだなって思って。
パソコン音楽クラブの『DREAM WALK』(2018年)は、音楽を聞くことで可能になるメンタルの逃避行のことを書いているって感じたので、僕はもっとフィジカルな大移動を書きたいって思いましたね。

――『Diamond』のゲストは「Cyber Attack」のマリさんの他に、Sola The Luvaが「Time」という曲に参加しています。

S:韓国育ちで、今はニューヨーク在住のラッパーです。元々ネットで交流があって、どんな曲が好きか、みたいなやりとりをよくDMでしていたんです。
「Time」は元々自分のために書いていたんですけど、途中で誰かを入れた方がいいと思って、彼に頼みました。彼はフューチャー・ファンクとか80年代以降のレトロな日本のポップスとかがめちゃくちゃ好きで、ちゃんと文脈を理解してくれると思ったので。
声がめちゃくちゃかっこいいんですけど、クセが強いわけではなくて、僕が出せない低音を出せるのがすごく羨ましいです。
彼はずっと地元を出たいって言っていて、「Outta This City」って曲もつくっていて。『Diamond』で書きたかったシナリオと共通するものがあると思ったので、オファーしました。

――マリさんとの「Cyber Attack」は?

S:僕、日本語の作詞をするのがあんまり好きじゃないんです。 自然な日本語かつユニークで面白い歌詞を書ける人がそういえばいるな、と思ったのがマリさんでした。突飛な歌詞が書けるだけじゃなくって、お互いに無理しないキーの位置がちょうど近かったこともあって、これはいけるなと思いました。
マリさんの曲って、短調があんまりないなんです。悲しいメロディーの曲がないんですよね。だから、そういう曲を歌ったらどうなるんだろうって好奇心から、「やってみませんか?」ってお願いしました。
アレンジはめちゃくちゃ悩んで5パターンくらいつくりましたね。アシッド(・ハウス)の歌モノってあんまりないなって思ってつくったんですけど、やっぱり「サイバー攻撃」なんて歌っているくらいだから、最低でも(BPM)140くらいないと「サイバー攻撃」じゃないなって。
それにしても、「サイバー攻撃」なんて言葉を入れてくるの、すごいですよね。元々は「なくなるシティ」ってタイトルをつけてくれていたんですけど。

――(笑)。今、「アシッド」って言いましたけど、SNJOくんの曲にはアシッド・ハウス風の、びよびよ鳴るベースラインがよく出てきますよね。

S:好きですね。アシッドは909state*さんの洗脳で、びよびよ鳴ると嬉しいんです。今回は「2019年ナイズ」、「2020年ナイズ」されたアシッドをやりたいなって思いました。
*兵庫・宝塚出身のプロデューサー/トラックメイカー。Maltine Recordsから作品を発表している他、dj newtownのリミックスなども手掛けている

――ベースだけじゃなく、シンセの音が揺れていることも多いと感じます。それがSNJOくんの色や作家性にもなっている。

S:コードを長音で鳴らしているのが苦手なんです。でも、LFOを噛ましたら長音でもいけるんですよ。なので、うねるようなシンセを使いがちですね。ツジオさんが「シンセがうねると嬉しい」って言ってて、「あっ、そうだ!」って気づきました。ギターも、ジャーンって鳴らしているのより、ファンクっぽいワウがかかってるようなのが好きで、刻んでいたり、点在していたりするような音の置き方が好きです。

――「ファンク」といえば、SNJOくんの音楽にはファンクネスがあると思うんです。ビート・コンシャスで、すごくグルーヴィー。

S:ビートで触発されるようにつくっていますね。曲の構成や曲調を、最初のビートで決めることもあります。

――《POTLUCK Lab. vol.1》で「歌いたいことがなくても歌モノはつくれる」と語っていたことが面白いと思いました。一方、SNJOくんはアルバムのテーマを設定して曲を書いていたり、言葉の意味性にも重きを置いていると感じます。

S:意味性に重きを置いてはいるんやけど、それ自体はファンタジーだから自分が歌いたいことではない、っていう感じですかね。ドッペルゲンガーに歌わせている、みたいな感じなんです。

――客観的に見ているんですね。メッセージを伝えたいとか、自分自身を表現したいとか、そういうことではない?

S:そのうちそうなるかもしれないんですけど。でも、歌いたいことはまったくないんです。何か問題意識があっても、絶対にそのことを曲に書かないと思いますし。僕が好きだった音楽はそういうものじゃないから。椎名林檎の音楽にもシャカタクの音楽にも、僕は何も求めないですし。
今作では逃げたい、逃避行したいって考えてはいるけれど、マジでそうしたいとは考えていないので。「逃げたい人がここにおりますわ」くらいの感じ。いや、それですらないかも。なるたけ耳に引っかからないかないような言葉を選んでいると思います。
「そんなこと別に思っていないだろ」って感じるけど歌っちゃう、っていうのが重要かな。だって、「誰も見たことない景色だけを見る/俺は子供の頃からずっと天才でいる」(Mall Boyz (Tohji, gummyboy) の「Higher」のリリック)なんて思わないけど、思わず歌っちゃうじゃないですか。
だから、なるたけ平易な言葉で、インパクトがあって、文字の並びとしてかっこいい――そういう作詞をしたいと思っていますね。

――今日の《tiny pop fes》に出ていたミュージシャンたちの音楽は、パーソナルでベッドルームっぽいんだけど、シンガーソングライター的な暑苦しさがないんですよね。開かれていてポップで、個人的なんだけど個人的じゃない、という矛盾がある。それは、SNJOくんの音楽にも通じることだと思いました。

S:確かにそうかも。集合的な無意識みたいなものを歌っている感じがするというか。妙なドライさというか、突き放した感じがありますよね。

――『Diamond』を締めくくる「Long Vacation」のリズムは、SNJOくんの曲としては珍しくサンバ/ボサノヴァ風です。

S:1月に出たfeather shuttles forever*の『図上のシーサイドタウン』に、1曲トラックを提供しました(「鉢植えのサボテン」)。それが「アシッドのサンバ」みたいな曲で、ラテン音楽も面白いなと思っていた時のものなんです。案外ビート・ミュージックとの相性も良いと思ったし、feather shuttles foreverの後に《Local Visions》から(ブラジル音楽から影響を受けている)wai wai music resortの作品(『WWMR 1』)(https://local-visions.bandcamp.com/album/wwmr-1)が出ることも知っていましたし、その流れもあって。ラテンって、コードの進み方も独特なものがあるじゃないですか。
*マリ(mukuchi)と山田光(hikaru yamada and the librarians)のユニット

――ブラジル音楽は特にそうですね。

S:それをやらないわけにはいかないなって。それと、コンピ(『Oneironaut』)のために書き下ろした曲やから、《Local Visions》が1年かけてやってきた色々な活動を一回まとめて、総括しておく必要性もあるんじゃないかって思いました。ローファイとハイファイ、歌モノとビート・ミュージック――そういう要素をぎゅってして、どっちとも取れないものをつくってみたのが「Long Vacation」。
この曲で《Local Visions》の流れを象徴できるんじゃないかと考えて。もちろん捨てアカさんが主宰だから、僕が口出しするわけではないんですけど。「Long Vacation」は頭文字が「LV」ですし。

――じゃあ、《Local Visions》へのラブレターのような曲?

S:ほんとそうですね。ありがとう、みたいな気持ちで書いていますし。「恩返し」って言ったら、ちょっと恥ずかしいんですけど。

――「貢献」と言ったら堅苦しいし。

S:もうちょっと良い言葉ないかな。《Local Visions》の今までの活動とこれからを繋げるというか、その2つが繋がるというか……『Diamond』がそういうアルバムになればいいなと思っています。
自分の活動のペースは探り探りなんですけど、 《Local Visions》のことをちゃんと考えるようになったんです。新作の表題曲をディスコにしたのもそうで、ヴェイパーウェイヴのアンセムはディスコをスクリューしたものだから、そのルーツに立ち返ってみて。
《Local Visions》はまだ2年目やし、ちゃんと「自分と自分の友だちでやっていく」っていう気持ちでできていると思うんですよね。だからこそ、今つくれるものがあるとも思って。《Local Visions》の2年目、その後半に差し掛かっていて、秋冬くらいの時期に出すアルバムとして、どういうものが適切なのかっていうのを、かなり考えました。

――そこまで《Local Visions》で作品を発表することに意識的だったんですね。

S:そうです。《Local Visions》も《Yu-Koh》も、内輪ノリの規模をでかくしつつ、ゆるゆるやっていたら、もっと広いところにリーチできるって思っています――僕は、それ以外の方法を知らないので。 僕としては、捨てアカさんはホーミーなんです。やっている音楽は違えど、ヒップホップ・クルーだと思っていますから。それくらいのイタさと強さで、これからもやっていきたいですね。〈了〉

Text By Ryutaro Amano


■SNJO Soundcloud
https://soundcloud.com/user-137401667-261714786

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SNJO

Diamond

LABEL : Local Visions
RELEASE DATE : 2019.11.12

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