次の物語があったら楽しい。その続きがあって、その生活があってカルチャーになる。
WOMBでのロングセットに挑むMamazuが語る
ニュー・アルバム『Alias』制作の裏側
Mamazu × REO MATSUMOTO
東京を拠点に独自のクリエイションとセレクションにより、アーティスト/DJの両軸でアジア諸国をはじめ世界中からオファーが絶えないMamazuがニュー・アルバム『Alias』をリリース。 アルバムに込められた想いや2月に敢行されるWOMB での6時間に及ぶロングセットへ の意気込み、パーティーに対する想い……等身大のMamazuの言葉をアムステルダムに拠点を移したばかりのハンドパン・アーティスト、REO MATSUMOTOに引き出してもらった。
MAMAZU × REO MATSUMOTO SPECIAL TALK SESSION

東京のレコード屋からアルバムを出す意味
REO MATSUMOTO:まず初めに1月にリリースされたニュー・アルバム『Alias』について聞きたいのですが、どういった経緯で《GLOCAL RECORDS》(原宿に拠点を置くレコード・ショップ/レーベル)から出すことになったんですか?
Mamazu:昔から《GLOCAL RECORDS》でよくレコードを買ってて、ネタとかサンプルも集めていて。1枚目に出したレコードでもそこで買ったネタを使ってるんですよ。そういった繋がりもあって、今回アルバムを出したいってなったタイミングで《GLOCAL RECORDS》のゲンタ君に相談しましたね。
REO MATSUMOTO:《GLOCAL RECORDS》のゲンタ君は昔からMamazu君のことを応援している印象で、「もっと上がって行ってほしい」という気持ちを持ってくれてるよね。
Mamazu:ゲンタ君とは昔から現場であって遊ぶような関係でしたね。《GLOCAL RECORDS》はワールド・ミュージックから派生した音楽を主に扱っていて、珍しい存在だと思います。自分は東京を中心に活動しているから、「東京のレコード屋からレコードを出す」っていうのもカルチャーを盛り上げる意味でいいと思ったんですよね。
REO MATSUMOTO:レコード屋の話が出たけど、コロナ以降、外国のお客さんが日本のレコードを掘りに来ることが増えてる印象ですよね。海外で会うレコード・マニアからも、日本にしかないレコードとか、日本人アーティストの伝統音楽のレコードとかを掘りに日本に来ているという話をよく聞く。日本の音楽、レコードに対する海外からの需要が高まってることを考えると、今回のアルバムはMamazuさんが今後海外で活躍するきっかけになりそうな予感がします。

田舎臭い曲に自分のセンスを乗せて表現するのが面白い
REO MATSUMOTO:今回のアルバム・ジャケットは、和の雰囲気を感じさせるデザインですよね。歌舞伎とか屏風絵とかのニュアンスを感じるような。
Mamazu:昔からファンだったHAMADARAKAっていうアーティストにお願いしました。情念が滲み出ちゃっているというか、なかなか描こうとしても描けない部分を描いているところに惹かれて。最初の5、6曲ができた段階で音源を渡して、それも参考にしてもらいながら描いていただきました。
REO MATSUMOTO:アルバムのタイトル“Alias”はどういった意味を込めましたか?
Mamazu:“Alias”っていうのは、仮想空間の誰でもアクセスできるフォルダみたいなイメージでつけましたね。
REO MATSUMOTO:今って仮想現実とかメタバースの世界観が一般化され始めるさなかの時代だと思うんだけど、そういった時代の流れとも共通性を見出せるコンセプトに聞こえます。ただ、近未来的で時代を先どったようなコンセプトがありながら、音楽の方はワールド・ミュージック、伝統的な雰囲気が濃密に入っている曲ばかりで、そこに良い意味でのギャップを感じました。2つの世界観が並行的に存在しているイメージが沸いたというか。
Mamazu:田舎臭い曲とか、地元のおっちゃんが歌ってるような曲とか、そういう土着的なものに、自分が持っているテクノロジー、センス、リズムを乗せて表現するのは過去、現在、未来が一つになっていく感覚がして面白いなと思っていて。ダサい歌なのにカッコつける抜け感みたいなのも好きで。
REO MATSUMOTO:なるほど。意識は近未来に向かいながらも、内側にはシンプルで昔ながらのエッセンスがあったり、伝統的なものにインスピレーションを受けているというのがMamazuさんらしい。過去、現在、未来のつながりを音で表現していると考えると、今回のアルバムについてより深く理解できるような気がします。
Mamazu:サンプルは昔の音だったりするんだけど、そこに今の自分を乗せて、未知のものを作るという感覚ですね。
REO MATSUMOTO:最近、細野晴臣さんのある文章を読んで共感したんですけど、今の内容にすごくあてはまるなと。作り手が「新しいビートとかリズムのパターンが生まれた!」と思って作ったとしても、どれもこれもが過去のリズムとかを模倣してることに気づいた、みたいなことを書いていて。つまり、過去にあったものが自分というフィルターを通して風のように流れてるだけなんだ、みたいな。Mamazuさんの話を聞いていて、近いものを感じたかな。

次の物語があったら楽しい。その続きがあって、その生活があってカルチャーになる。
──Mamazuさんは2月8日に《WOMB》で開催されるパーティー《COMPASS》にて、約6時間のロングセットを披露される予定です。今回で4回目となる《COMPASS》の趣旨や、スタートした経緯を聞かせてもらえれば。
Mamazu:昔からレーベルやオーガナイザーから「海外から〇〇が来るけどDJしない?」みたいな連絡くることが多かったので、じゃあ自分たちでそういうゲストを呼べる遊び場を作っちゃえばいいんじゃないか、ってことでスタートしました。
REO MATSUMOTO:第1回~第3回目と集客もすごくて盛り上がりを感じました。《COMPASS》が面白いと思うのは、「ただパーティーをしておしまい」ではなくて、その後にパーティーに呼んだ海外のアーティストと制作をするっていう側面もあることかなと思います。どういうコンセプトをもとに活動していますか?
Mamazu:自分たちは音楽を作るのが生活じゃないですか。だったら、せっかく海外からアーティストに来てもらったからには、彼らと音楽を作って発信することが、パーティーとしてもレーベルとしても一番いい見せ方なのかなと思って。ただパーティーをやって終わりだとその時だけになっちゃうから、そこから生まれた次の物語があったら楽しいし、その続きがあってその生活があってカルチャーになるんじゃないかな。
REO MATSUMOTO:第4回となる今回の《COMPASS》は、これまでとはうってかわって、海外ゲストなしですよね。メインフロアは初めから終わりまでMamazuさんのプレイということですけれども、すごい挑戦ですよね。Open to Lastを《WOMB》でやるのは初めてですか?
Mamazu:初めてですね。今回のアルバムは、次のステージにいく区切り、というイメージも込めて作っていて。2月8日のOpen to Lastも、自分がこれまでやってきたことを出し切るというか。今の自分にどこまでできるんだろう、っていう挑戦ですね。

“一瞬で儚い”パーティーを切り取るために
──《COMPASS》を手掛けているレーベル《HOLE AND HOLLAND》についても聞かせてほしいです。
Mamazu:昔からスケートしてクラブで遊んでいた仲間たち。みんな曲を作ってたから、「そろそろ自分たちで出したいね」っていうので作ったレーベルが《HOLE AND HOLLAND》だね。当時レギュラー・パーティーもやっていて、そのときはハウスがメインでブレイクビーツやディスコやったり。
REO MATSUMOTO:《HOLE AND HOLLAND》は東京のスケーター・シーンから出てきたイメージがあって、バックボーンにはヒップホップも感じます。
Mamazu:自分たちはブラック・ミュージックからの影響が大きくて。ヒップホップを聴いて、元ネタをディグってたらソウル好きになってディスコ経て、そこはダンス・ミュージックだったね。
REO MATSUMOTO:なるほど。ブラック・ミュージックからの影響という話でいうと、ニューヨークに《ザ・ロフト》っていう伝説的なパーティーがあって、自分も3回くらい遊びに行ったんですけど、どこか《COMPASS》と似ているなって。ロフトもハウス、ディスコ、ソウルとかがメインで、改めてブラック・ミュージックの面白さを教えてくれたパーティーなんですよね。
ニューヨークって人の移り変わりがすごい激しくて、パーティーではみんなすごい輝いた瞬間を過ごしてるけど、そこに顔を出さないと「いなくなった」と認識されてしまう。すごく刹那的な時間が流れているんですよね。ニューヨークで感じるそういう寂しさとかビルの隙間風の冷たさとかを僕は《COMPASS》にも感じるんだけど。でも違うところもあって、《COMPASS》は出演したアーティストの作品を残すことで、刹那の瞬間の1ページを切り取って残すという活動をしている。そこがやっぱり面白いポイントだよね。
Mamazu:結構そこは意識したかも。みんな音楽が大好きで、DJしたり踊ったりを全力で楽しんで、その日限りで終わっちゃうのは寂しくて。パーティーは一瞬だし、儚いのよ。気づいたら朝になってる。
REO MATSUMOTO:パーティーもそうだけど、人生も思い出作りみたいなものだしね。いまこの時代に生きる気の合う仲間たちで、「最高の思い出作り」をできることにすごく幸せを感じる。恵まれた最高のメンバーでやれているパーティーだからこそ、2月8日の《COMPASS》はぜひ遊びに来てほしいですよね。
Mamazu:余計なことは考えずに心で楽しんでほしいですね、もうノリで。ぜひ遊びにきてほしいですね。
<了>

Compass at Womb
2025.02.08(Sat)
Open 23:00
DOOR: ¥4000 UNDER 23 ¥2000
ADVANCE TICKETS: ¥3000
2F MAIN FLOOR
Mamazu -OPEN TO LAST-
FEAT. REO MATSUMOTO
4F VIP FLOOR
Sunga
TSU→
Fushiming
COURTNEY BAILY
1F WOMB LOUNGE
AKIRA ARASAWA
REO MATSUMOTO
YO.AN
Haruka Katagata
Mamazu『Alias』ツアー日程
02/08 東京 at WOMB
03/07 大阪 at SOCORE FACTORY
03/08 愛知 at ENBEACH
03/20 福岡 at KIETH FLACK
03/21 熊本 at BLOOM
03/22 鹿児島 at TIMELESS
03/28 仙台 at SHAFT
03/29 福島 at KARAN堂
05/04 京都 at METRO
05/05 名古屋 at KALAKUTA
and More
