ムーンライダーズ50周年企画 メンバー全員インタヴュー
白井良明
「“美しき老い”の歌詞は私そのものですね」
ムーンライダーズ50周年企画個別インタヴュー、第三弾はギタリスト、ヴォーカリスト、そしてバンドの圧倒的なムードメイカーでもある白井良明の登場。東京下町出身らしいきっぷの良さそのままに白井のギター・プレイはムーンライダーズの中にシャープでやんちゃな、それでいてホロリとさせる風合いを持ち込んでいる。もちろん、その卓越したプレイについては言うまでもなく日本トップクラスと言っていい。
加えて、白井はソングライターとしてここぞという時に重要な曲をムーンライダーズに提供している。例えば「ディスコ・ボーイ」(1979年『モダーン・ミュージック』収録。作詞は鈴木博文)、「青空のマリー」(1982年『青空百景』収録。作詞は佐伯健三、ムーンライダーズ)、「犬にインタビュー」(1985年『ANIMAL INDEX』収録。作詞は佐伯健三、白井)はもちろん、ライヴで大いに盛り上がる「Who’s gonna die first?」(『最後の晩餐』収録。作詞は鈴木博文)や「ヤッホーヤッホーナンマイダ」(2005年『P.W Babies Paperback』収録。作詞は坂田明)、あるいは7月に40周年再現ライヴも行った『DON’T TRUST OVER THIRTY』(1986年)に収録されている「超C調」も白井らしさ満載だ。一方で「ゆうがたフレンド(公園にて)」(シングル曲。作詞は糸井重里。アルバムでは2006年『MOON OVER the ROSEBUD』に宮崎泉によるダブミックスとして収録)のようなセンチメンタルなメロディをサラリと書けてしまう憎い漢でもある。レコーディングに少し遅れて参加したというニュー・アルバム『e.d morrison』でも、アルバム中屈指のユーモラスでメランコリックな1曲「美しき老い」(作詞は鈴木博文)の作曲を白井が担当、自ら歌った。ここぞという時に大きなホームランを打つ強打者なのだ。
今回、そんな白井へのインタヴューは、シンガー・ソングライターで家主のメンバーでもある田中ヤコブに質問を考えてもらった。7月にソロ・アルバム『県央の憂鬱』を発売した田中は自他共に認める白井の熱心なフォロワーで、過去には白井とも対談している。ムーンライダーズのライヴ会場にも姿を見せることが多い田中とは兄弟の契り(?)を結んだという白井にリモートで話を訊いた。
(質問作成/田中ヤコブ インタヴュー・文/岡村詩野)
鈴木慶一
「70年以上生きても知らないことはまだある。好奇心があるうちはやめない」
武川雅寛
「9人で“e.d morrison”という感じなのかな」
佐藤優介
「永遠に違う目が出てくるサイコロを振っているような感覚です」
Interview with Ryoumei Shirai
エンジニアも太鼓判のギター
──まず、新作の手応えから訊かせてください。
白井良明(以下、S):今回、僕が実は3年前から決まってた自分の仕事のスケジュールとぶつかってて、ちょっと制作に入るのが出遅れたんですよ。最初の方は兄弟(鈴木慶一、博文)が割と作品を多く出してきてて、その世界観がいい感じだなと思っていました。曲はみんな一曲ずつって感じだったけど、詞も兄弟二人が中心というのも特徴的だなと。それに加えて、ある曲を録音したら、その曲の余韻があるままセッションを始めて、それが一つにつながって組曲になっていったりとか。全体的にそういう面白みがある構造になってますよね。
──今回は田中ヤコブさんからの質問を中心に進めたいと思います。まず、「アルバム制作にあたって、バンドの中でご自身の役割をどのように考えていますか」という質問です。ソングライターとしての良明さんは今回(鈴木)博文さんが作詞をした「美しき老い」を作曲されています。
S:いきなり重大な質問ですね! でも思うのは、例えば「美しき老い」のあのメロディーを作ったっていうのは……まあ自然に作れたんですけど……深刻になりがちなものを明るくしていくっていうのは自分の役割かもしれないですね。『青空百景』(1982年)の「青空のマリー」のような、ああいうカンフル剤になるような曲がまさにそうですよね。それに、やっぱりギターで違う世界にもっていく……まあ、僕は勝手にやってるだけなんですけどね(笑)、他のメンバーの曲に対して勝手にやっているだけっていうか。でも、ヴォーカリストを想定しないで曲を作ることをずっとやってきたっていうのはあるかもしれない。そういう役目かな。
──これは慶一さんから伺ったんですが、エンジニアの原口(宏)さんが、良明さんのギターをダビングした瞬間にムーンライダーズになるっておっしゃっていたそうです。
S:嬉しいですね。それは、ありがたいお言葉ですね! 今回のアルバムだと慶一の「俺たち死に神、ヴォランティアーズ」とかのギターがそうだね。あとは「体毛のない孤独」、「Suite シャンデリア」、 なっち(夏秋文尚)の曲(「青空に泥靴」)とか、くじらくんの曲(「Suite 腕に夕日 肩に枯れ木」の1st Mov.「愚か者の壊れた杖」)とかも、確かにギターを後から入れて、そこから変わったのかもしれない。最初の方は録音に参加できてなかったんで、自分も頑張んなきゃなと思ってね、それでみんなでセッションで作った曲(「体毛のない孤独」)とかも含めて積極的にリフを作りにいきました。「〜ヴォランティアーズ」はアラン・ホールズワースみたいになったね。なっちの曲は、ガカンとリョウメイ(武川と白井によるユニット)みたいな、ちょっとボレロみたいな曲になった。まあ、ロック・ギターの印象的なイントロ、リフみたいなものを担った曲が多くなった感じかな。だから骨格って言われるのかもしれないですね。
──レコーディングの参加が少し遅れたことが、逆に火をつけた形になったわけですね。
S:そうですね。うまいこと言いますね(笑)。
──しかも、今回は澤部渡さん、佐藤優介さんの曲も初めて含まれました。二人が作った曲に関してはどのような感想ですか。
S:優介の曲は割とマイペースでしたね。ちょっと岡田(徹)師匠の匂いが満載で。澤部くんの方は、やっぱりちょっとこう、ライダーズ思いでしたね。澤部くんの曲はツイストっぽいヴァージョンも録ったと思う。結果としてちょっとルンバっぽいヴァージョンの方になったけどね。でも、二人ともライダーズを思って書いてくれた感じが伝わってきました。それでいて彼ららしさもあって……もう大賛成ですよ。
──ヤコブさんからも、「若手が入ったことによる変化というのをどのように感じていますか」という質問をいただいています。
S:二人、結構しゃべってくれるんですよ。それを聞いてると、若手が入る前の空気よりも、こんなことをこだわらなくてよかったんだっていうような風に思えるようになったかな。爽やかなんですよ。若手がやるフレーズっていうのは、同じフレーズでもなんか軽くて爽やかな感じがする。僕らが弾くフレーズっていうのは、同じフレーズでもなんか重くなるんでしょうね。それも彼らは面白がってるかもしれないしね。その世界観の、混ざったり、交わらなかったり、雲みたいに溶ける感じが、なんかいい感じです。青空と雲が溶け合うような感じ。
──二人がステージに立つようになってだいぶ経ちますけど、徐々に馴染んでいってる感じですか。
S:そうですね、もうだんだんタメ口になってきたり、ちょっと腹立つようなこと言ったりね(笑)。
──二人はライヴのセットリストを毎回熟考して用意しています。そこから何か新しい発見はありますか。
S:やっぱりみんな思ってると思うんだけど、ほとんどやってない曲を選んできたりするから、それを一生懸命練習するじゃないですか。そこは刺激ありますよね。リハーサルの日にちを増やしてくれっていうメンバーもいますよ(笑)。
ライヴでは常にムードメイカーの白井
──続いて、ヤコブさんから「ライヴでの良明さんのプレイとレコーディングでのプレイっていうのは、割と意識的に区別していますか」という質問です。
S:レコーディングでいろんなことやるじゃないですか。それをライヴだとなんかもっと発展できないかっていうところを探しながらやってるんですよね、ここんとこね。だから、再現ライヴってあんまり好きじゃないんですよ。もう何回もやってますけどね、僕はあんまり好きじゃなくて、なんかもっとものすごい変化、溶けて溶けてって感じのライヴ……最近のボブ・ディランの歌みたいに何歌ってるのかわかんないような、あんなようなことになったら面白いなとは思ってやってます。
──実際に良明さんのギターもレコーディング作品に忠実に再現してるわけでは全くなくて、今の良明さんのプレイがちゃんと出ていますよ。続いて、ヤコブさんから「そのライヴでのギター・プレイでこだわった点とか、この曲のここを聴いてほしいという部分は今回のアルバムにありますか」という質問です。
S:「美しき老い」はヴォーカリストにほぼ専念してるんでアレですけど(注:もちろんエレキ・ギターも弾いている)、特に…となると「〜ヴォランティアーズ」のイントロでしょうかね。あと「美しき老い」の僕のギターのエフェクトでしょ。「青空に泥靴」のイントロもね……まあ、ギターは全般楽しみに聴いていただきたいと思いますね。
「美しき老い」ができるまで
──ヤコブさんから、「1曲目「トンネルの向こうのNothing」、これは岡田さんの曲ですが、イントロだけで明らかにムーンライダーズの曲だというのがわかるのですが、その理由は意外とホーン・セクションなんじゃないかと考えました。今作では作曲に澤部さん、優介さん、夏秋さんを迎えてもムーンライダーらしさが保たれています。良明さんがムーンライダーズをムーンライダーズたらしめているサウンドの核はなんだと思いますか」という質問です。
S:うおー、サウンドの核ですね! 割と混沌とした楽器を多めに入れているところをうまくまとめてるとこかもしれないですね。あと、全員平等な音量にしているんです。この曲のイントロはギターを大フィーチャーするんだ! というよりも、その影で対比してるクジラくんのトランペットなり、慶一のギターとかが、ちゃんとアンサンブルとして存在する、わかるようにしていることじゃないかな。まあ都立高校的というか(笑)、全員平等というか、そういうようなところじゃないかな、何をしてもね。ギターがここでこうなるから核になるだろうと思われている、その核以外のことをするっていうことでしょうね。ソロ活動をライダーズの中に持ち込むようなことかもしれないですね。それをやれば、どんどん新鮮になっていくのかなと思いますけどね。ふーちゃん(博文)にしろ、くじらくんにしろね、何やったって、みんな勝手にやっててまとまってるのがムーンライダーズなんで。
──良明さんは特にソロで活動されるフィールドが他のメンバーとは少し異なっていて、交流の幅も広い。そこで得たものを持ち込んだ末の変化は、他のメンバー以上に多彩なのかもしれませんね。
S:まあ、その時々でハズしてんのかな? って思う時もあるんですけどね(笑)。でも、今回はそういうのは全然ない。「美しき老い」は、既にふーちゃんの詩がありまして。それにすごい感銘いたしまして。それを暗く歌ってもしょうがないと。なら私は明るく歌わせてもらいますよっていうようなことでできた曲なんです。
──博文さんの詩が最初からいくつかあったそうですが、誰がその詩に曲をつけるのか、どうやって決まっていったのですか。
S:僕は最初、ふーちゃんが出してきた詩をいくつか読んで、あ、これ、っていう感じで、もう積極的に手を挙げました。「僕やりますよ!」って。あの歌詞は私そのものですからね。っていうか、あれ、もう僕の歌ですからね(笑)。
──「穴の中の穴」とか「夢の中の夢」などちょっと言葉遊び的な側面もあるし、キャッチーなリフが乗っているし、良明さんの良さが表れたとてもいい仕上がりだと思うんですが、曲をつけるプロセスはどのような感じだったのでしょうか。
S:僕、ヒップホップなんかちょこちょこ聴いたりしてるんですけど、四小節パターンを延々繰り返したりするじゃないですか。そんな感じをAメロとかイントロとか、要するに同じようなコード進行を何回もやって、それがいつの間にかサビになってるっていうようなことを何年か前からやってるんです。あの曲のコード進行も、前回のアルバム(『it’s the moooonriders』)だと「再開発がやってくる、いやいや」とかのあの感じにちょっと似たりしてますよね。まあ芸風というか、そういうような傾向がありますね、最近はね。
「再開発がやってくる、いやいや」──ちょっと重いシリアスな歌詞でも持ち前のエンターテインメント・スピリットで明るく聴かせるのは良明さんらしさですが、実際に忍び寄る老いみたいなものに対する危機感や恐怖心はあるのでしょうか。
S:死んじゃうってことに対する危機感はあんまりないんですけど、実生活ですぐ起きちゃうとかさ、ちょっと歩くとすぐ階段途中でくたびれちゃうとかさ、そういうことが起こると、ああ、近づいてるのかなって思うんだけど、それでもそれなりに楽しもうっていうことがあるんで。だからこの歌詞も、老いを楽しんでいこうっていうところを歌ってるんだよね。
ヒップホップからの気づき、ジュリアン・ラージという刺激
──ちなみにヒップホップだとどの辺の作品とかアーティストがお好みですか。
S:いや、全然知らないんですよ。ただ、バスケットボールの試合とかをテレビで見てるとヒップホップが流れたりするでしょう? あとMTVとかで流れる割と売れてるようなのとか。ああいう感じのところで好きになったりしますね。やっぱり自分のギター道ということでいうと、そうやっていろいろ細かく聴いてますよ。
──以前お話した時にはネルス・クラインが好きとおっしゃってましたね。他に気になるギタリストっていらっしゃいますか。
S:ジュリアン・ラージとかね。
──いいですね。
S:ライバルですね(笑)。
──バークリー音大卒業の人気ジャズ・ギタリストです。
S:前はかなりビバップだったと思うんですけど、ここんとこカントリーだかジャズだかわかんないようなことをやってるし、ちょっとアンビエントな雰囲気もある。ビル・フリゼールと一緒にやってもいるよね。そういうところなんか面白いですよね。30代と70代の人がセッションする感じ。僕自身もジャンル関係なくどんどん溶けていきたいって思ってるんでね。ここ5年ぐらい自分のリーダー活動ができてないんですよ。もちろんムーンライダーズは別としても、誰かのバンドのバンマスとかの仕事が多いのでちょっと悔しいなと思ってて。来年、僕が今度は個人50周年なんでね。もっと色々やっていきたいですね。僕、最近はスカパラをやめた北原(雅彦)さんと一緒にいろいろやっていて。以前、北原さんとSURF TRIPってバンドをやってたことがあってね、で、来年はそれを復活させたいなとか思ったりもしてますけどね。なんか最近思うんだけど、何でもできるってさ、結局何にもないってことかなとか思っちゃったりするんだよね。だからこれからは、ちょっと自分のために固まったものをやろうかなと思っていますよ。
──ヤコブさんからの質問。続いては「良明さんはメイン・ヴォーカルを務めることも多いですけど、歌うことに対してのこだわりはありますか」。
S:なるたけ太い声を出すようにしてます。
──それは何か理由があるのですか。
S:いや、僕ね、声がこう、ほら、細いっていうか、高かったりするんですよ。
──ムーンライダーズの中でも声質は他のメンバーとは明らかに違いますよね。
S:ですよね。僕は誰の影響も受けてないのかな。でも、全然意識してないですね。でも、割と意図的に慶一たちとは似ないようにはしてるかな。
──次です。「岡田さん、かしぶち(哲郎)さんの未発表曲をあえて自分たちのものに取り込んでいくにあたって、具体的に、それから心境的にもどんな作業だったのか教えてください」。
S:心境的にはね、ものすごくやろうやろうっていう気持ちでしたね。岡田くんの曲で始まって、かしぶちくんの曲で終わるっていうのは、やっぱりとっても意味のあることだと思うし、それは気持ち的にはものすごく素敵なことだなと思う。二人の曲は両方とも彼ららしいんでね。新しい風が欲しい半面、彼らの中のトラディションを大事にしようって気持ちでやりましたね。
──なるほど、トラディションですか。岡田さんの曲はポップで、かしぶちさんの曲はアンニュイで洒落た雰囲気を持っています。ギタリストとして良明さんから出たアイデアはありましたか。
S:かしぶちくんの曲になるとね、自然にジム・ホールが頭の中に入ってくる。
──良明さんのルーツ中のルーツですね、ジム・ホール。
S:そう、「ジム良明」になっちゃうんですよね(笑)。ジム・ホールが自然に降りてきて、そのフレーズでアプローチしたりとかしてますね。そもそもかしぶちくんの曲なんて涙、涙じゃないですか。ただね、泣いてばかりもいられないんで、新しい美しい追憶を謳歌しようと。もちろん、かしぶちくんのあの雰囲気の余韻を持ちながらセッションして、それが組曲になってたりしていった。その辺が面白いなと思ったりしてますけどね。
──ギタリストとしての新たな挑戦については何かありますか。
S: ちょっと細かいことで悪いんだけど、オープントライアードっていう考え方があって三和音(1°3°5°)の真ん中の音を8ve飛ばしていく奏法があるんですね(注:音程を跳躍させてコード構成音を1音ずつ弾く奏法)。一オクターブ以上飛ばすとコード感がすごく出て(ちょっとバロックっぽい)ソロを展開していくっていう。その考え方にアルタードなどを絡ませて弾いてゆく。僕がやろうかなっとしてることで、ジャズなんかではみんながやってるんだろうけど、それをカントリー的、ロック的に演奏していきたいなっていうのがあって。ドミソをドソミにしたりしていろいろ組み合わせを変えて曲のコード進行に合わせたメロディを作っていくっていうことなんですが、これが全くやってなかったことなんですよ。もうこれできたらいつ死んでもいいなって感じかな(笑)。ただ、自分、今72歳だから、もうね、覚えが悪いんですよ(笑)。だからたくさん練習しなきゃいけないんだけど、これが今もうアレンジ業・バンマスの仕事とかで忙しくてなかなかできない。
──今回の作品のギタープレイには、そこはまだ活かされてないですか。
S:そうですね。今回はまだやってないかな。
──じゃあ、まだまだアルバム作ってもらわないと!
S:そうですね!
30本のギターと”欲しい病”
──また、ヤコブさんから。「プライベートではどんな過ごし方をしていますか、常にギターを弾いているのでしょうか」という質問です。
S:いや、ほとんど弾いてないですよ。今はずっとコンピューターでアレンジしてるし、その確認でギターを弾く程度ですけれども。だから今ちょっとスキル落ちてますね。このところずっとアレンジばっかりやってるんでね。いや、もちろん弾いてますけどね。今新しいギターが欲しくてしょうがないんで。
──ちなみになんというギターですか。
S:機材なんですけど、LandgraffのClean Boostっていうのが欲しいなって思ってたり。あとはPRS(ポール・リード・スミス)のギターが欲しいなと思ってたりとかね。昨日も楽器屋行って、楽器売り場の前でうろちょろしてました。
──今何本ぐらいお持ちなんですか。
S:そうでもなくて、30本ぐらいです。人によっちゃさ、100本とかね。野村のよっちゃん(野村義男)なんか1000本ぐらい持ってんじゃないかな。
──定期的にチェックしたり、メンテナンスされてるんですか。
S:仕事で使う時だけですね。結構かわいそうなギターたちなんですけど。まだ新しいのがどんどん欲しくなる。そういう意味では、年老いてないかなとか思うな(笑)。
──今回のアルバムで使われてるギターは、何本ぐらいだったんですか。
S:今回は2、3本です。いつもライダーズ用って決まってなくて、その時々の自分の気持ちの流れで使ってます。だから今使ってるのが二種類あるんですけど、それを全ての仕事で使ってますね。今回使ったのはギブソンのレスポール・ジュニア・スペシャル。これ、田中ヤコブさんのサインが入ってるの。サインしてもらったことあるんですよ、このギターに(と言って画面に見せてくれる)。で、僕はヤコブさんにもサインして、契りを交わしました(笑)。
──「年齢による変化は身体的精神的にありますか。それがギタープレイに影響しますか」という質問です。
S:ああ、影響すると思いますね。わかりやすく言うと、フレーズを忘れちゃうっていう。だから新たな気持ちで演奏できるっていう利点はあるんですけど、覚えときゃもっといろんな自分の選択肢がいっぱい表現できるんだけど、忘れちゃうっていうのは一つありますね。それを、やばいなとは思ってないんですけど。あと、やっぱりフレーズが抽象化してくるっていうか、そういうのがありますね。10音引かなきゃいけないことを3音ぐらいで十分になってきたりとか、そういうような気持ちもある。
──さて、個人で周年を迎えるにあたっての意気込み、バンドとして周年を迎えた意気込みをおしえてください。
S:ああ、個人の時はやっぱり4年ぐらい前に浅草公会堂なんかで周年だったんですけど、その時は自分のバンドと一緒にやってたんで、もうその幸せいっぱいで。今回はムーンライダーズなんで、幸せというよりも、なんか逆に重みがある、その楽しさを感じております。
──今回のアルバムで特にいいなと思える曲をおしえてください。
S:「俺たち死に神、ヴォランティアーズ」ですね。あと、もちろん「美しき老い」。この2曲がセットになって、割とこのアルバムの中のテーマ性があるような気がします。この2曲からちょっと香ってくるものがありますね。
──最後に今回質問を考えてくれた田中ヤコブさんに何かメッセージがあれば。
S:じゃあ、いつかセッションしましょう。あと、僕が死んだらムーンライダーズに入ってね(笑)。
<了>
Text By Jacob TanakaShino Okamura
